大磯町には、神奈川県の無形民俗文化財となっているお祭りがあります。
その名も「相模国府祭(さがみこうのまち)」。
毎年5月5日に大磯町国府本郷で開催される、五穀豊穣や平和を祈ったお祭りです。
その地域の守り神である神社の「寒川神社」、「川勾神社」、「比々多神社」、「前鳥神社」、「平塚八幡宮」、そして総社である「六所神社」が神揃山(かみそろいやま)と呼ばれる山の上で神事をおこないます。
中でも特徴的なのが「座問答」という儀式です。
現在の神奈川県が「相模国」と呼ばれていたころ、「どこが一番大きな神社か」を決めるにあたり論争が起こり、仲裁の結果円満に解決したという出来事を儀式化したものがこの「座問答」です。
「我こそはこの国を納める神であるぞ」「いずれ明年まで」と言う掛け声と共に一番大きな神社を決めずに持ち越し、みんなで五穀豊穣と平和を祈り、舞やお囃子、太鼓でこの日を祝います。
さぁ神様をお連れするぞ!
平塚にある前鳥神社では、朝5時に役員が集まり、総代さんを始め役員総出で、国府祭(こうのまち)に向けた準備をします。
そうやって各神社では早朝から神事を行い、自分たちの神社から大磯町に向け順番に到着するように出発して行きます。
ぞくぞくと太鼓囃子に導かれ、お神輿が到着します。
先に到着した役員さんたちは控えとなる会場(公民館等)で神職さんや楽人たちの休憩場所をつくり、婦人部は食事の準備やお茶などを振る舞えるように支度をしてくださいます。
「ムギブルマイ」とは?
前鳥神社では、お神輿を担ぐ青年たち20名を選抜し、麦振る舞い(ムギブルマイ)という御霊にお供えした穀物をいただきます。
「神の恵を体に取りこみ、力をつけてお神輿を無事に担ぐ」という意味があります。
里芋の葉にのせられた、チカラ飯という大豆を入れた餅米と唐辛子をいただいて、全員でかけ声をかけてお神輿を担ぎ、いよいよ神揃山に向かってのぼって行きます。
今では参加する青少年も少なくなりつつありますが、地元の神事を代々受け継ぐという日本人ならではの心意気から、毎年参加者が途絶えることなく続けられている祭事でもあるのです。まさに地元愛です。
チカラ飯を食べていざ出発だー!
いざ神揃山へ!
羽織袴に身を包み、雅楽を奏でる楽人を従え、神揃山へ向かってのぼって行きます。
その様は圧巻です。
山頂までの道のりは現在は住宅街になっており、神事を見守る近隣住民の協力あってこそのお祭りだと実感します。
昼の時間をはさみ、いよいよ下山です。
ここからまた順に神主さんが祝詞をあげ山を降りていくのですが、これがまた見もので、神対面・国司奉幣と鷺の舞等が披露される逢親場(現在の馬場公園)に向けて下山していくのです。
登りはそこそこの勾配のある山をあがるのですが、下りは結構な急斜面の階段を慎重に降ろしていきます。
下山までの間に「神様の会合」なる座問答が繰り広げられ、酔っ払いの神様と呼ばれている日々多神社の暴れ神輿がまるで酔っぱらいの千鳥足の様に動きます。
それを担ぎ手が上手に捌く様子は勇壮で、毎年観客を沸かせているのです。
他にも平塚八幡宮の巫女装束の神楽笛や、雅楽保存会の演奏等、1000年以上の歴史がある祭事らしい音色と歓声が聞こえてきます。
きっと神様も、五穀豊穣、天下泰平を叶えてくれることでしょう。
豪華絢爛、雅な舞や太鼓囃子のお出迎え!
山を降りた各社が一同に馬場公園に集結し、神対面の神事、国司の奉幣が行われます。
馬場公園までの参道には出店や屋台が並び、普段落ち着いた印象の大磯町が一気に活気付きます。
新型コロナの影響で、数年は観光客を入れない形で神事が行われました。しかし令和5年は久しぶりの開催で、天も味方をしてくれたようでステキな祭りになりました。
祭りを盛り上げるのはやはり太鼓囃子ですよね。神輿の掛け声とは別にカンカンと叩く音は、お腹の底に響いてとても気持ちが良いものです。
昨今ではこうした祭りの音が煩いという声もあるといいますが、やはり日本古来の伝統や文化は後世に伝えていきたいものだと思います。
ぜひ、歴史ある大磯の祭りを訪れてみてはいかがでしょうか。
相模国府祭(さがみこうのまち)
住所:大磯町国府本郷
開催日:2023年5月5日
問合せ:大磯観光協会/駅前観光案内所 (0463-61-3300)・六所神社(0463-71-3737)