文化人や政界の重鎮が愛した名物和菓子の老舗大磯の「新杵」

大磯に居を構えていた文豪島崎藤村や吉田茂元首相がひいきにしていたという明治24年(1891年)創業の老舗「新杵(しんきね)」さん。 

新杵さんといえば西行法師の旅笠を模した「西行まんじゅう」が大磯の手土産としても有名です。
いつもいただくばかりなので自分でも行ってみなきゃなぁと思い、買いに行ってきました。

駅から小田原方面へ徒歩10分、歴史を感じる佇まい

「新杵」さんは国道一号線沿いの照ヶ崎海岸の信号近くにあり、木造建築に金文字の看板が風格のあるお店です。
お店の前に横付けする形で車が2台、バイクや自転車はお店の横に停められます。
停められないときは隣の横浜銀行などコインパーキングが点在しています。

訪れたのは日曜日の開店すぐ。すでに一組のお客さんがお買い物をされていました。

明治時代にタイムスリップしたような雰囲気に圧倒される

マスク着用のお願いの貼り紙とカウンター上にある手指消毒のアルコールだけがコロナ禍ならではの光景ですが、ここだけ外とは違う時間がゆったりと流れています。

創設者菓子職人の齋藤市太郎さんが横浜の新杵総本舗の職人だったころ、1893年にシカゴでおこなわれた内外大博覧会に出た時の表彰メダルです。
大磯の新杵さんは横浜の総本舗からのれん分けされたお店なのだそうです。

「新杵」さんといえば西行まんじゅうと虎子まんじゅう

丁寧に対応してくださった女将さんに取材を申し込むと、おすすめされたのが「西行まんじゅう」「虎子まんじゅう」「豆大福」。
3個ずつ購入してきました。

原材料はとてもシンプル!保存料など一切入っていません。
長きにわたって愛される名品は素材の良さと職人さんの匠の技の賜物なのですね。

虎子まんじゅうは1個150円、消費期限は常温2日間です。

大磯にゆかりのある虎御前の伝説にちなんだお菓子で蒸しまんじゅうです。
もちもちの皮とサラっとしたあんこ(口に入れるとすっと溶ける!)が上品。

焼き印が虎の後ろ姿なのはお客様に牙を向けてはいけないという理由からだそう。
大磯に居を構えた吉田茂元首相がこのまんじゅうを好み、自分用や来客用にと買い求めていたというエピソードは有名です。

西行まんじゅうは1個150円、消費期限常温5日間となっており発送可能です。


焼いた皮はしっとりだけど香ばしく、ほのかに黒糖の風味がします。
中身は虎子まんじゅうのあんこより少しコクのあるこしあん。
表面はしわひとつなく、つるんと滑らかで切った断面は皮とあんこの間に空洞ができることなくあんこがみちっと詰まっています。

西行まんじゅうは神奈川銘菓に指定されています。
全国を吟遊していた西行法師が「心なき身にもあはれは知られけり 鴫立沢の秋の夕暮れ」は大磯で詠んだ歌とされており、それにちなんで西行まんじゅうと付けられたそうです。

午前中には売り切れてしまう大人気の豆大福

消費期限が当日という豆大福は、柔らかい餅と赤えんどうの食感のコントラストが絶妙!
中の粒あんはずっしりと重厚感があるのに上品なキレのある甘さです。
午前中には(早い時は10:00ごろには)売り切れてしまうというのも納得です。

ちなみに音楽家の葉加瀬太郎さんが「大磯に世界一おいしい豆大福がある」とラジオで紹介されていたのはこちらの豆大福です。

季節を感じる和菓子が美しい

  
お雛様とお内裏様モチーフの落雁やひなあられもカラフルで見ているだけで楽しくなります。

季節の移ろいとともにラインナップが変わっていく美しいお菓子たちがずらり。
許されるなら「ここからここまで全部ください」と言って買い占めたい!
季節ごとに「今日は何があるかな」と通いたくなります。

名だたる文豪や政界の重鎮たちが愛した和菓子の老舗「新杵」さんをご紹介しました。
おいしくて美しいお菓子を食べる贅沢な時間は人生を豊かにしてくれます。
時代を超えて地元の方たちに愛される素敵なお店です。
みなさまもぜひ足を運んでみてくださいね。

新杵
住所:神奈川県中郡大磯町大磯1107
アクセス:JR東海道本線「大磯駅」より徒歩10分
営業時間:8:30-16:00
電話番号:0463-61-0461
定休日:火曜日、水曜日
HP:https://m.facebook.com/oisoshinkine/?locale=ja_JP

※記載情報は取材当時のものです。変更している場合もありますので、ご利用前に公式サイト等でご確認ください。