平塚は自然がたくさんある地域です。その中でも海産物といったら相模湾でとれた新鮮な魚介類がまず思い浮かびますが、最近ではあまり専門店が見られなくなっていると思いませんか?
そんな中でも特にお目にかかることがない店のジャンルに乾物店がありますが、なんと平塚には海産物・花かつお製造販売をしているお店があるのです。
それが千石河岸にある株式会社長谷金本店さんです。
「いやぁ本当に苦しいんですよ。」と会ってすぐに苦笑いされる社長の長谷川守さん。冗談でもないお話らしく、周りの乾物屋さんはほとんど閉めてしまわれ、今は長谷金本店さん(以後は長谷金さん)だけになってしまったとか。
たしかに個人店が少なくなっている中で、かつお節のお店なんてそこらじゅうにあるわけないでしょう。日本人の和食離れを考えると、手間ひまかけて出汁からとって味噌汁を作る食事なんて私自身忘れていた食卓風景でした。
祖母が台所でかつお節のかたまりを削って料理に使っているのを眺め、削りたてのかつお節を桐箱の引き出しからつまみ食いしたことを思い出しました。
ところが長谷川さんがおっしゃったのは和食離れだけではなく、不漁の影響が大きいということでした。
かつお節の敵は缶詰じゃー!
そう熱く語ってくださった社長のお店は、創業明治23年花かつお製造元としてできたお店で、かつお節屋としては4代目だそう。社長のおじいさんは市場の製氷システムをつくり鮮度を保つための工夫をされた、平塚の食卓においしいお魚がのる道筋を作ってくださった方ということで、海の話、魚の話をとても熱心に話してくださいました。
よく聞く話ですが、海の環境はずいぶん様変わりし、削り節にする本鰹、鯖、そうだ鰹などが不漁で獲れない上に、なんとそれらが最近ではツナ缶として海外でも食べられるようになったために、「原料の敵は缶詰なんですよ。」と苦笑いしながらおっしゃるので驚きました。
また鰹節として使う魚たちは脂が多すぎると適さないということで、本来なら水深の浅いところで採れたものが良いそうですが、海のルールがあり水深300mより浅いところでは漁ができないそうなんです。なのでなるべく脂ののった大物になる前の1.8kgくらいの魚を使って乾物にしたいとのことでした。
ですが海外への流通が多くなり、豊漁の年もあるのに高止まりで値段が安くならず、原料を手に入れるのが難しい時期が続いているそうです。
健康には間違いなく良いもの
みなさん、鰹節を食べる習慣はありますか?
我が家では料理の脇役として豆腐の上にかけたり、青菜のおひたしなどにかけたりお好み焼きの上にかけるくらいしか思い浮かばない食材なのですが、意外にも必ずストックがある食材だと気付きました。
そんな中で卵かけご飯好きには朗報です。生卵を落とした上に鰹節をのせ、そこに醤油をかけて食べることで「塩分を過剰に摂りすぎることがなく、風味が増してめちゃくちゃおいしいんですよ。」と長谷川さんが教えてくださいました。「とにかく削りたての鰹節は味も香りも全然違うので、炊き立てご飯にのせて食べてみてください」と。
店には種類の違う削りたての削り節がグラム販売されており、店内に香るいい匂いとそれらを想像しただけでお腹が鳴りそうでした。
実はカルシウム摂取においては魚の骨を食べるよりカツオの身を食べる方が良いそうです。身体に良い食材だということは間違い無いですね。
七夕ふりかけをご賞味あれ
長谷金さんといえば『ひらつか匠の店』として名を連ねておりますが、平塚市の名産品認定商品のひとつである七夕ふりかけをご存じでしょうか?私も子どもの頃から長谷金さんのふりかけを食べて育ちました。原料にこだわったふりかけでおいしいですよ。風味がよくパリパリのふりかけを手のひらに出して、こそっと摘んだりしていました。
今はそのふりかけが七夕のラベルでお化粧され売られています。私もちょっとした手土産にさせていただいているくらい、食にこだわる友人にはとても喜ばれています。
原料の高騰で価格も上げざるを得ないとおっしゃっていましたが、そのぶん味で勝負したいと自信を持ってお話しくださいました。
ふりかけは平塚市観光協会でも取り扱いがあり、あさつゆ広場さんにも置いているとのことで、意外と気付かないだけでみなさんも目にしているかも知れませんね。
お話を聴き終わったあとの長谷川さんの印象は、まさにお店のホームページに書かれているような、「削り節は自己主張しない力持ちです。普段は名脇役に徹し、時には香り立つ主役に。」と、まさに削り節のようでした。
ぜひみなさんもお店に足を運んで老舗の味を食卓に並べてみませんか?
長谷金本店
住所:神奈川県平塚市千石河岸24-8
アクセス:JR東海道線「平塚駅」南口よりバスで約10分
電話番号:0463-22-0112
営業時間:9:00~17:00
定休日:日、祝日